「新しい趣味の創作」(1)

新しい趣味とは

−マトリックスの世界でお花畑を作ること−

地球上にある数多くの種類の美しい草花は、大自然の摂理によって長い時間をかけて生み出されたものです。地球上のいろいろな場所には、その自然条件によって珍しい植物が数多く存在しています。

かって、多くの先駆者が探検航海によって、これらの植物を発見したのです。17世紀、大航海時代以降、世界の各地から続々と未知の植物がヨーロッパにもたらされました。17、18世紀のヨーロッパは、宮廷を中心とした貴族文化の時代であり、国王、貴族や大商人は、珍しい植物を集めるために、プラントハンターを世界の各地に派遣しました。そして採取した植物を後世に残すために、植物園や温室庭園を数多く建設しました。

以上は現実の世界での珍しい草花の発見とその栽培についてでしたが、自然科学を扱う基本システムであるコンピュータでのシミュレーションによっても、美しい草花のようなものを培養できる可能性がないとはいえません。

もしかしたら、現在まで数多くなされたコンピュータによる自然科学の計算過程の中に、すでに美しい草花のようなものが生み出されているかもしれないのです。そしてこれを誰もまだ発見していないだけのことだとしたら、ここにすばらしく興味を誘うテーマ、趣味が生まれます。

これは、現実の世界ではなくコンピュータの世界での探検です。コンピュータの世界は今風には、サイバースペース(電脳空間)とかマトリックスの世界などと呼ばれ、すなわちマトリックスの世界での現代版プラントハンターになることです。  

実はこのような探検をした人が、すでにいます。今から約30年前に、ベノワ・マンデルブローという数学者は、たぶん高等学校の数学の教科書にも出てくるであろう簡単な複素数の関数による漸化式の計算結果をコンピュータの画面に色分けして表示させると、めずらしい模様が現れることを見いだしました。そして計算領域を広範囲にかつ詳細に調査した結果、きわめて美しい宝石の装飾品ようなものを数多く発見し、これらはフラクタルという名前で多くの文献に公表されて、世界中から注目され喝采をあびたのです。

私は、余生を過ごす状態にいますので、宝石にはあまり興味がなく、誰もが見過ごして通ってしまうであろう、道ばたにひっそりと咲く草花に興味をおぼえます。しょせん仮想空間での探検なので、そこで発見された宝石も草花も現実のような価値の相違はなく、こころの問題だけなのです。

ただし探検をする以上 ,世界中で全く公表されていない美しい草花のようなものを手探りの状態で発見するつもりです。このため成果は簡単には出ませんが、このブログでは進捗に応じて少しずつ成果を記録していきたいと思っています。

2005-01-30
(追記)

当時としては、まさに五里霧中だったのですが、現実の世界にしろ、電脳の仮想の世界にしろ、自己が新たな事物を得るためには、「発見」しかないということです。ここでは電脳空間での何らかの「発見」も、「趣味」になり得ることを記しています。

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この図はコンピュータによる計算のみで生み出されたものですが、試行錯誤によって偶然に近い状態で発見されたものです。いろいろな自然科学の計算式とその広大な計算領域についての計算結果の中に、上図のような美しい模様が生み出されているかどうかを調査するのは、容易なことではなく、まさに探検なのです。探検には位置を確認するためのコンパスとか双眼鏡が必要なように、マトリックスの世界の探検にも特殊なツールを必要とします。

上図のような模様は、誰にでも発見できるものではなく、特殊なフィルターすなわち色メガネをかけないと見つけることはできません。いかに独自の特殊な色メガネを創作するかがこの探検の成否を決めるのです。

2005-02-06
(追記)

電脳空間を探検するには、電脳の能力の助けを借りる以外に方法はないのです。電脳とのコラボレーションによって、独自の特殊なフィルター(色メガネ)を如何に「発見」するかがこの探検の成否を決めるのです。これは、井筒俊彦のいう「分節」する方法を新たに「発見」することなのです。

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現実の世界の草花の造形やその配色の妙は、自然の驚異をつくづく感じさせるものである。

同様に、自然科学の基礎となる数学によって生み出される、図のような模様の造形やその配色も「なぜ」という驚きがあります。

この現実と仮想の世界で生み出される両方を比較することによって、将来この「なぞ」の解明に少し近づけるかもしれない。

老子や日本の古典にでてくる芸術家は「虚」をきわめて重視しました。 いけ花の古い伝書に「虚に遊んで実に帰る」という言葉もあります。ここでの「虚」は「虚空」のことで、無限の可能性を生み出す潜在能力をもつ空間、場を意味します。人間の場合は、脳や心に相当します。

コンピュータのメモリー空間、すなわち数で満たされる空間(マトリックス)もこれに属します。

2005-03-03
(追記)

「虚空」とは、前回までの考察のテーマ「「無」から「有」を生み出す東洋思想」の「無」そのものです。人間の場合は深層意識に相当します。

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今回は、現実の世界のどこかで、見たことがありそうな花の特集です。

自然科学から生み出された花も、自然のものに比べて大差はなさそうです。 電脳の世界での草花さがしの探検は、やっと軌道に乗った状態ですが、偶然の手探りにしてはけっこう発見できるのです。

このことは、現実の花のイメージに近い形状を造形するための条件は、複雑なものでなく比較的簡単なものらしいことを意味します。 当分は、つれづれなるままに電脳の世界をさまよい歩き、試行錯誤による調査を継続しますが、このような行動がきわめて快適であり、無謀な探検ではなさそうな状況になってきたことは確かです。

2005-03-23
(追記)

この頃になると、かなり自信がついてきたようです。数学という言語を基盤にした無「本質」的分節は、花のような形象が生み出しやすいのかもしれません。

以上の追記は、2012.9.2