六相円融義(ろくそうえんゆうぎ)

六相円融義(ろくそうえんゆうぎ)

自然の移ろいを写す水面と個々の花の配置の妙をイメージした、一幅の水辺の情景として、選択された画像です。

六相とは、ある構造物を、それを構成している部品が融合して一体化し、一つの全体としてみた立場(総相、同相,成相(じょうそう))と、個々の構成部品のそれぞれについて見た立場(別相、異相、壊相(えそう))を表しています。円融とは、これらの立場が相互に融和し、円満な世界を形成していることです。

個と個が互いにさまたげあうことなく解け合って、美しく調和し、一体化すると同時に、それぞれの個性も発揮できる世界なのです。

水面に群生する花の情景、これを構成する個々の花や自然を写す水面も、それぞれ美しく輝いています。

モネの「睡蓮」と海印三昧(かいいんざんまい)

ところで電脳が生み出したこの画像、モネの「睡蓮」のイメージに似てきてしまいました。これには撰者の意図も影響しているのかもしれません。

クロード・モネ(1840-1926)はしばしば「光の画家」とよばれ、光に対して誰よりも鋭敏な感覚をもった画家で、自然現象のさまざまな変化、とくに光の変化を観察しそれを描き続けたと言われています。1900年頃から「睡蓮」を描き始め、この連作の進むにしたがって絵の主題は、睡蓮の咲く池から光の水面での反映へと移っていき、この反映が生みだす鏡の世界へ引き込まれるのです。

モネは晩年に次のように語ったと言われています。「私がしてきたたことは、ただ私の前に示されている万象を見つめることと、絵筆をとおして万象に立ち会うことだけなのです」。そして刻々と移り変わる森羅万象が水面に反映する世界に、とりつかれたのです。

まさに華厳経での海印三昧の世界そのものではないでしょうか。ここで海は広々とした水面、印は写ることを意味し、水面に森羅万象が写し出されるように澄みわたった心の静まりの境地をいいます。

(モネについての参考文献:「水と光と睡蓮と」、六人部昭典、芸術新潮、1992年11月号)